肺癌治療に関する情報誌:Lung Cancer Cutting Edge(LCCE)
2016年07月号vol.68
LCCE 特集:座談会

「メディカルスタッフの力を結集して肺癌と戦う―日本肺癌学会の新たな挑戦」

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滝口:近年、チーム医療の進歩により、患者さんに対する治療やケアの質、安全性などが格段に高まってきました。こうした流れの中で、各学会では、チーム医療のあり方に関する研究が求められつつあります。例えば日本肺癌学会では、医師以外のメディカルスタッフの学会員を増やすために、メディカルスタッフが参加できる学術集会などの企画が出てきました。
本日は、日本肺癌学会の準会員の薬剤師、看護師、管理栄養士の皆様と、日本肺癌学会理事長である光冨徹哉先生にお集まりいただきました。学会におけるメディカルスタッフの活動に関する課題や解決方法についてディスカッションしたいと思います。

メディカルスタッフが
がん領域の学会に参加する動き

滝口:最初に、看護師、薬剤師、管理栄養士の皆様が参加している、がん関係の学会について教えていただけますか。

鈴木:がんに特化した薬剤師主体の学会としては、日本臨床腫瘍薬学会や日本緩和医療薬学会があります。また、日本医療薬学会が母体となり、がん専門薬剤師制度が発足してからは、日本臨床腫瘍学会や日本癌治療学会など、医師主体の学会に参加する薬剤師も増えております。
最近では、薬剤師も専門領域に特化していく傾向がありますので、日本肺癌学会などの癌種に特化した学会に参加する薬剤師も増えつつあります。

矢ヶ崎:矢ヶ崎香先生がんに関連した看護師主体の大きい規模の学会は、日本がん看護学会です。会員は約5,500名で、がんに関心を持っている看護師が多数参加しています。臨床の看護師や大学の教員の会員も多く、がん看護の発展のために共同で学会を運営しています。 ほかには、日本乳がん看護研究会、日本放射線看護学会、また日本小児看護学会でがんに特化したセクションがあります。あとは日本緩和医療学会や日本癌治療学会や日本臨床腫瘍学会などに参加する看護師も多く、チーム医療や最新の治療、知見を学んでいます。 また、日本看護協会による認定資格制度として、がんに特化したがん看護専門看護師や、緩和ケア、がん化学療法、乳がんなどの認定看護師があり、年々認定者数は増えています。個々にスキルアップし、最善のケアを探求したいという思いがあり、精力的に学んでいます。

川口:管理栄養士が具体的にがんと関わり始めたのは、がん病態栄養専門管理栄養士認定という制度が始まった3年前からです。これは日本病態栄養学会と日本栄養士会が一緒になって認定しているもので、現在、264名が認定を受けました。
これまでは、管理栄養士の栄養指導や特別治療食提供の中に、がんにフォーカスしたものがありませんでした。ですから、栄養指導をする場合は、医師に別の栄養指導対象病名をつけていただき、栄養指導に携わることが多くありました。しかし今回の診療報酬改定で、特別食に加えて、がん患者、嚥下障害のある患者、低栄養状態の患者さんに栄養指導を行った場合も加算ができるようになりました。したがって、これからは管理栄養士が、積極的にがん治療に関わっていくと思っています。

滝口:それぞれの職種でさまざまな学会、認定制度があるのですね。メディカルスタッフが医師主体の学会に参加する動きもあるわけですが、ここにいる皆様は日本肺癌学会にも参加しています。当学会に対して興味を持ったポイントや得られるメリットはどんな点ですか。

矢ヶ崎:メディカルスタッフにとって、日本肺癌学会に参加するメリットは、肺がん患者に対する最新治療の知見や動向を理解する機会が得られることです。患者さんの周囲で起きる問題は多様ですので、周辺で生じる問題に対して、学会で学んだ最新治療を考慮しながら、チームでどのように関わっていくべきか考えることができます。やはり患者さんが安全・安楽に生活と治療を両立していくには、医師と共に看護師ほかメディカルスタッフがうまく協働していく必要がありますので、一緒に学会活動を行うことで、肺がんの患者さんに貢献できるのではないかと思います。

学会でメディカルスタッフの持ち味を シェアし、
臨床に活かしたい

光冨:2014年、日本肺癌学会では京都宣言が採択されました(図1)。京都宣言の中で、メディカルスタッフとのコラボレーションについて述べているように、当学会は患者さん中心の肺がん医療を実現するのが第一と考えていますが、そのうえでチーム医療推進を掲げて、学会の各委員会のファンクションとつながる構造をとるようにしています。そのため、医師以外のヘルスケアプロフェッショナルの会員を増やしたいと思っているのですが、現時点では同学会の医師会員は7,330名であるのに対し、看護師・薬剤師・栄養士などの準会員は99名です(図2)。この点が課題ですね。

矢ヶ崎:例えば日本乳癌学会は、看護師が主体の活動、参加が盛んですね。がん看護専門看護師やがん化学療法認定看護師、がん放射線療法看護認定看護師、あるいはがん性疼痛看護認定看護師もいます。それらの看護師は肺がんの患者さんに携わっているので肺がん患者に関する医療への関心は高いと思います。

光冨:乳がんの患者さんは若い女性が多く、また予後が良いので長く生きられます。看護師にとっても共感したり、関わりを持ったりしやすいのかもしれません。

滝口:滝口裕一先生肺がんに関して言いますと、これまで長期生存の方が少ないことから、あまり患者会もなかったですね。しかし最近は、サバイバーの方が増えて患者会もできつつありますし、いろいろながんを包括する患者会の中で、肺がんサバイバーが入っていることもあります。こうした面から考えて、今後、日本肺癌学会のあり方も変わってくるかもしれません。

光冨:病気そのものが変わったことにつれて、学会のファンクションも変わってくるということですか。

滝口:はい。長期生存が得られれば、薬の副作用などの悩みも長引きます。こうした問題に継続的な支援をするのは、医師だけでは難しいです。

鈴木:そうですね。最近では内服抗がん剤や、副作用が軽微で入院の必要のない点滴抗がん剤も増えています。また従来の抗がん剤にくらべ、在宅中にいつ副作用が発現するか、非常に予測しづらい免疫チェックポイント阻害剤の治療も急激に増えております。この点において、在宅中の服薬コンプライアンスをいかに担保したら良いか、あるいは在宅中に発生した重篤な副作用をいかに拾い上げ、受診につなげていくかという課題が出てきています。今後、これら在宅中の治療の管理における、各施設の工夫を持ち寄るシンポジウムなどがあると、非常に有益だと思います。

光冨:あと、栄養サポートチーム(NST)に関してですが、前の病院でNSTの立ち上げに関わり、管理栄養士と一緒にラウンドしていました。そのとき、やはり各職種でベース教育が違うので、患者さんの課題を話し合うのに苦労した記憶があります。

川口:川口美喜子先生現在、厚生労働省が摂食・嚥下、低栄養とがんについて指針を出しています。ですが、光冨先生がおっしゃったような場面で活躍できる管理栄養士はまだ少ないです。

光冨:そういう人を育てる機会として、ぜひ学会のメディカルスタッフ向けの企画を使っていただければと考えています。近く医療従事者向けセミナーを行いますので、これにも積極的に参加してください(図3)。

滝口:あと、やはり学会に参加する以上、実際にメディカルスタッフの方々が、一般演題やシンポジウムで発表してもらいたいとも思っています。そうした活動が、医師にとって学びにつながります。医師に栄養学や看護などの視点があると、病院のカンファレンスで多職種の方に参加してもらうようにする自覚が出てくるのではないでしょうか。

委員会活動などを通じて
積極的に参加してほしい

滝口:日本肺癌学会の定款では、正会員は医師と決まっています。看護師、薬剤師、栄養士は準会員になります。今後メディカルスタッフの方々に学会で貢献していただくには、どうしたらよいでしょうか。

光冨:学術集会を魅力的にするだけでは、会員になるメリットがあまりないですね。ですから、平時の活動にどのぐらい魅力を持たせられるかを考えないといけません。

鈴木:鈴木賢一先生平時の活動という点では、肺がん診療ガイドライン作成の際に多職種の視点を盛り込むことは非常に有効と考えます。我々は日常的に肺癌学会から発刊されている診療ガイドラインを活用しています。作成メンバーに薬剤師などの他職種が入ることで、支持療法をはじめとした治療サポートの質的向上にもつながるほか、何より京都宣言の、メディカルスタッフとのコラボレーションに基づいた「患者中心の肺がん医療」「メディカルスタッフとの連携」につながるのではないかと考えます。

矢ヶ崎:確かにガイドライン作成は看護師とほかの職種の方々と合同でできる作業だと思います。例えば、症状マネジメントに関するガイドラインでは薬の使い方やケアの方法などを多職種の視点から議論すると良いと思います。また学会の委員会活動も、看護師が積極的に取り組みたいことですね。

川口:管理栄養士が学会との関わり方を考えるきっかけとして、医師からの「栄養について考えることは大切だ」というメッセージがあればいいと思います。例えば胃瘻を作ったあとに管理栄養士が関わるかどうかで、患者さんの栄養状態の改善は全然違います。

光冨:光冨徹哉先生ガイドライン委員会を含め、委員会活動をメディカルスタッフに行っていただくというアイデアは、取り入れやすいと思います。今年は委員会メンバーを決める年なので、ぜひ実行したいです。

滝口:本日いただきましたアイデアを活かすことで、今後より多くのメディカルスタッフに日本肺癌学会に入会していただき、学会が活発になることを期待したいと思います。それが患者さんや家族への貢献につながることになるはずです。本日はお忙しい中、貴重なお話をいただき誠にありがとうございました。