肺癌治療に関する情報誌:Lung Cancer Cutting Edge(LCCE)
2017年11月号vol.76
LCCE 特集:座談会

免疫チェックポイント阻害薬の効果予測

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非小細胞肺癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の臨床経験が蓄積される中で、有効性を判別するための効果予測のストラテジー構築は急務となっています。本日は、免疫学の造詣が深く、免疫チェックポイント阻害薬での治療経験が豊富な埼玉医科大学国際医療センター呼吸器内科 各務博先生と仙台厚生病院呼吸器内科 菅原俊一先生のお二方を迎え、本年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された話題も交えながら、ご意見を伺いたいと思います。

免疫チェックポイント阻害薬の作用機序

久保田:これまでのがんに対する治療は、がん自身を標的としていましたが、免疫チェックポイント阻害薬の大きな特徴はリンパ球を主な標的としていることです。その作用機序はどのように理解すればよいでしょうか。

各務現在使用されている主な免疫チェックポイント阻害薬には抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体があります。PD-1とCTLA-4はT細胞の機能を抑制する分子で、末梢性の免疫寛容を維持する働きを持っています。両者の大きな違いは、腫瘍細胞に対する免疫プロセスの中で機能するフェーズが異なるということです。CTLA-4はリンパ節でT細胞が活性化してエフェクターT細胞になる、プライミングフェーズで抑制的に働くのに対し、PD-1はその後、標的組織でT細胞が攻撃を始めるエフェクターフェーズでの抑制機能を持っています(図参照)。まだ完全には解明されていませんが、PD-1はT細胞受容体(TCR)あるいはCD28という分子のシグナルに必要なリン酸化に対して脱リン酸化を行っていると考えられています。PD-1阻害薬を用いると、TCRあるいはCD28からのシグナルがT細胞に入るようになり、活性化したT細胞が腫瘍細胞を攻撃する、というのが現在考えられている作用機序です。

図:がん免疫サイクルの7 steps

CTLA-4は③のプライミングフェーズで阻害作用を持ち、PD-1は主に⑦の腫瘍細胞を攻撃するエフェクターフェーズで阻害作用を示す。

久保田免疫チェックポイント阻害薬は効果の出る人と出ない人が存在しますが、それはT細胞の機能が反映されているのでしょうか。

各務腫瘍免疫が主にPD-1によって抑制されている状態であれば、抗PD-1抗体によってPD-1依存性T細胞抑制を解除することで効果が出ると考えられます。逆に言うと、PD-1以外のフェーズで機能が抑制されているなら、抗PD-1抗体を使っても効果は出ないでしょう。

免疫チェックポイント阻害薬の効果予測

久保田臨床の現場では現在、効果予測についてどのように考えられているのでしょうか。

菅原臨床試験の結果から、PD-L1の発現、いわゆるtumor proportion score(TPS)が治療効果にある程度影響するということはわかっています。ただ、非扁平上皮癌ではPD-L1発現例で全生存期間(OS)が延長されるのですが、Checkmate 017試験1) によると、扁平上皮癌ではPD-L1発現による治療効果の差は認められませんでした。

各務肺癌の中でも、非扁平上皮癌と扁平上皮癌とでPD-L1のバイオマーカーとしての意義は異なります。腎癌や乳癌などの他癌種では、PD-L1発現はむしろ予後不良因子になっており、普遍的なバイオマーカーであるとは考えにくいですね。

菅原臨床現場では、pseudo-progressionというような現象も見られ、実際にどこまで治療を継続していいのか、あるいはどの時点で中止するべきなのか、多くの先生が悩んでおられるところではないかと思います。臨床試験での生存曲線の落ち方を見ても、最初の数ヵ月のところで無効例を見極めなければいけないと考えられますので。
ここで当院のデータをご紹介したいのですが、ニボルマブで治療した70例を、副作用があった群(irAE+群)となかった群(irAE-群)に分けて調べたところ、興味深い結果が出ています。主な副作用は皮疹と甲状腺機能異常で全体の40%超を占めていたのですが、irAE+群ではPR以上の効果を認めた割合が非常に高かったのです。全体の奏効率は28.6%で既報と一致する結果だったのですが、irAE+群では50%以上にのぼっています。病勢制御率(DCR)も同様の傾向です。逆にirAE-群は、本来は副作用がないので長く治療を続けられる状況でありながら、大半の症例で進行するという結果になっています。無増悪生存期間(PFS)をみても同様の傾向です。このことから、副作用を免疫反応の現れとみなすことができるのではないかという推察が成り立ちます。したがって、副作用が出たときに、そこで治療を中止してしまうなど慎重になり過ぎるのは良くないということと、いかに副作用をマネジメントしながら治療を続けていくかということが重要になると感じています。

久保田リンパ球の働きの重要性を示唆する結果ですね。また、ALK陽性肺癌などのように、進行が速い腫瘍に対してはどのような対処が考えられるでしょうか。

菅原最近よく話題になっており、2017年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)でも報告がありました。MET遺伝子に変異のある集団は進行が速いことが知られていますが、PD-L1の発現が50%以上あっても、METのexon 14にskipping mutationのあった症例は、治療効果が乏しいという結果が報告されています2)

各務PD-L1にはインターフェロンγなどのサイトカインによって発現する機序と、細胞増殖シグナルに依存して発現する機序があります。インターフェロンγ依存性にPD-L1が発現しているなら、それは免疫が活性化していることを示しますので、抗PD-1抗体の効果が期待できます。しかし、増殖シグナルに基づいて発現したPD-L1は免疫状態を反映するものでないため、効果予測因子にはなりにくいかもしれません。

久保田治療成績が良好なデータを見ると対照群の成績もいいので、そのような進行が速い症例が入っていないということも考慮して、慎重に捉えた方が良いかもしれませんね。特に臨床試験は参加するのに時間がかかりますから。
もうひとつ、臨床でみるのはなかなか難しいのかもしれませんが、tumor mutation burden(TMB)についてはどのように考えればよいでしょうか。

各務T細胞免疫は自己と非自己の認識から始まりますので、自己から非自己への変化、すなわち遺伝子変異がなければ何も起こらないというのは間違いありません。ただ、全ての遺伝子変異が有効なT細胞免疫を起こすわけではなく、遺伝子変異の質も問題になっているようです。すなわち、T細胞のプライミングを起こし、その後の免疫プロセスを誘発できる抗原性の高いペプチドが必須であり、遺伝子変異が多ければそのポテンシャルを持つ腫瘍抗原が存在する可能性が高くなるということですね。ただこの場合、TMBは確率論で考える話になるので、例えば閾値を設けてそれ以上の場合は有効だ、というような考え方は難しくなります。

菅原Microsatellite instabilityのある大腸癌の症例では治療効果がよいという報告もありますが、同じ考え方になるのでしょうか。

各務各務 博 先生ミスマッチ修復能が失われた腫瘍細胞では、大腸癌の場合、遺伝子変異が通常のがんの10~100倍になることが知られていますので、結局はTMBが大きいことを示していると考えてよいと思います。一方で、腎癌のTMBはがんの中では平均的なのですが、これまでに免疫治療の高い効果が示されています。単純にTMBが大きければいいのではなく、これも質の問題があるようです。遺伝子変異産物が、T細胞反応性の高いエピトープとなりうるのかどうかが重要だと考えられます。

リンパ球機能とバイオマーカーの考察

久保田次はリンパ球機能から見た効果予測について伺いたいのですが、バイオマーカーの候補にはどのようなものがあるのでしょうか。

各務抗PD-1抗体はエフェクターフェーズでPD-1依存性の免疫抑制を外す力だけを持つ薬ですから、それ以外の免疫プロセスが正常であることをバイオマーカーで確認できれば効果を予測できます。いま注目されているのは末梢血です。PNAS誌で発表された先行研究では、肺癌患者に抗PD-1抗体を投与した後、4週間以内に末梢血でPD-1陽性CD8陽性T細胞の増加が見られないと、治療効果は低いと報告されています3)。リンパ臓器でプライミングされたT細胞は、必ず末梢血を通って臓器に行きますので、そこで免疫状態を観察できるだろうというアイデアです。

久保田CD4やCD8、樹状細胞を見るのですね。

各務腫瘍のほとんどはMajor Histocompatibility Complex (MHC) class I拘束性の抗原しか表出しませんので、これまではMHC class I拘束性の抗原を認識できるCD8陽性T細胞がクローズアップされてきました。ただ、CD8陽性T細胞の機能制御を担っているのは、樹状細胞とCD4陽性T細胞です。この両者が相互的に作用して、CD8陽性T細胞に、標的の細胞を傷害するための許可を与えています(ライセンシング)。とすると、当然、CD4と樹状細胞の状態も見る必要があるだろうと考えられます。

菅原今後はMHCのclass I抗原のみならず、class II抗原も含めて考えていかなければならないということですね。

各務その通りだと思います。ペプチドワクチンの研究では、MHC class I拘束性のショートペプチドを使ったときには効果が乏しく、MHC class II拘束性の抗原となりうる12mer程度のロングペプチドや、ホールプロテインを使った場合に効果が高くなることが知られています。すなわち、CD4を活性化するようなシークエンスが含まれていることが重要だということですね。今後、どの細胞がどう抗原を認識しているのかが明らかになっていけば、より有効なMHC class II拘束性の抗原も発見されるかもしれません。

久保田今年のASCOでの各務先生のご発表は、非常にインパクトがありました。

各務ありがとうございます。私たちの研究は、末梢血のCD4陽性T細胞の中に存在するエフェクター型T細胞と、制御性T細胞のバランスを評価することで、免疫状態を推測できるのではないかというものです4)。CD8陽性T細胞を活性化して殺細胞機能を与えるかどうかについて、この2つのタイプのT細胞はせめぎ合いをしています。私たちは、そのバランスを評価し、CD4陽性エフェクターが優位な場合に抗PD-1抗体が奏効しやすいことを見出しました。この結果からも、治療前の抗腫瘍免疫を評価するためには、CD8だけではなくCD4陽性T細胞と、樹状細胞が重要だと考えています。

久保田 馨 先生(司会)
菅原 俊一 先生

久保田このようなお話を聞くと、PD-L1単独でバイオマーカーとするには不十分に思えますね。

各務ただ、腫瘍がインターフェロンγからのシグナルをもらわないと抗腫瘍免疫は成立しないということも分かっているので、そのインターフェロンγのシグネチャーとして捉えるのであれば、PD-L1にもマーカーとしての意義はあるでしょう。

菅原ワクチンの場合は特定の抗原があるので、インターフェロンγの産生が評価しやすいと思うのですが、免疫チェックポイント阻害薬のように特定の抗原を標的としないでシステマティックに投与している場合は、インターフェロンγを直接測定するのはなかなか難しいのではないでしょうか。

各務ご指摘のとおりで、末梢血中で腫瘍組織のインターフェロンγを測るのは難しいだろうと思います。他の疾患、例えば結核では代替としてケモカインを見る方法もあるようなのですが、がんで同じ方法を使えるかどうかはわかりません。
末梢血から腫瘍免疫を評価しようとする私たちの取り組みを、前向き、多施設で検討する取り組みを進めており、ちょうどNorth East Japan Study Group(NEJ)で第II相試験が始まったところです。このような取り組みで結果を出せなければ、臨床には応用できないと考えています。

早期の効果予測と今後の治療戦略

久保田次に、現状での免疫チェックポイント阻害薬の対象となる患者集団についてご意見を伺います。まずは早期での効果予測が重要になると思うのですが、腫瘍マーカーはひとつの指標となりうるでしょうか。

菅原当院で経験したpseudo-progressionにおいて、画像上はPDになっているけれども腫瘍マーカーはむしろ低下していた症例もありました。ですので、腫瘍マーカーが病勢をある程度反映している症例において、画像上増大が認められても腫瘍マーカーがあまり増加しない場合は、臨床症状や画像所見その他の因子も加味しながらpseudo-progressionの可能性を考慮してもよいのかもしれません。

久保田腫瘍マーカーは、今までは世界的に軽視されてきた側面もあるのですが、免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測するという面では期待できそうですね。ただ、臨床現場で実際に効果判定を早期に行うのは難しい部分があるのではないでしょうか。

菅原確かに実臨床では、病状が急速に悪化しそうな患者さんへの抗PD-1抗体は効果が出るまでの時間を考えると使いづらいところがあり、実際にはドセタキセル+ラムシルマブを使う先生も多いようですね。

各務今年のASCOで、抗PD-1抗体を使った後の化学療法は奏効率が非常に高いという報告がありました5)。実は私たちも同じような経験をしています。ニボルマブ治療病勢増悪後に行ったドセタキセル+ラムシルマブにより、まだ少数例においてではありますが、高い奏効率が得られました。また、我々の施設では、進行が速くともPS良好なうちに次の治療機会を提供したいと考えて、抗PD-1抗体治療後8週目で効果判定をし、病勢増悪時には積極的に化学療法に変更しています。これにより、checkmate057では20%程度であった治療後3ヵ月以内の早期死亡症例が、10%未満に抑えられています。

菅原:興味深いデータですが、抗PD-1抗体そのものが細胞傷害性の抗がん剤の治療効果を高める作用を持つとは考えにくいと思うのです。とすると、in vitroや動物実験では、抗PD-1抗体を単回投与すれば主効果はしばらく持続することがわかっていますので、これは、抗PD-1抗体が誘導した免疫状態が残っていると考えられますよね。治療効果が出なくて投与はもう行っていないけれども、身体の中では免疫の準備が整っていて、そこに化学療法を行うことで何らかの活性化のスイッチが入り、効果が出るようになったと。当院でも、PD-L1が高発現で効かなくなった患者さんの組織を取ると依然として高発現のままだったり、あるいは陰性だった患者さんが化学療法後に再度調べると発現が認められたという例があり、抗がん剤や血管新生阻害剤が、腫瘍免疫機能の回復あるいは向上に影響を及ぼしているのではないかと感じます。そういった意味で、これらの薬剤と免疫チェックポイント阻害薬との適切な併用やシークエンスが今後重要になるのではないでしょうか。

各務私も同じ意見です。化学療法にはmyeloid系の細胞をある程度減らすという効果があります。抗PD-1抗体では外すことができなかった抑制性免疫細胞という別のブレーキを化学療法が外すことで、効果が高まることもあり得ると思います。化学療法と抗PD-1抗体の併用療法の多くで奏効率が高くなるという結果も、このような推論を裏付けています。現状では併用療法は推奨されませんが、抗PD-1抗体治療後病勢増悪時に化学療法を行うのは悪くない戦略でしょう。一方、細胞障害性抗がん剤を使うと遺伝子変異が増えるので、抗がん剤後に抗PD-1抗体を行うことが良いのではないかという考え方については否定的な報告がなされています。

久保田化学療法との併用は、今後の治療戦略に重要な位置づけを占めそうですね。一方で、プライミングの有効性を高めるという意味では、放射線療法の役割はいかがでしょうか。

各務放射線は腫瘍のアポトーシスを誘導して腫瘍抗原の放出を促すと報告されています。また、放射線により生じたdamage-associated molecular patterns(DAMPs)により樹状細胞も活性化されますので、プライミングに都合のいい状態を作ることができると考えられます。このように、放射線療法との併用も今後の戦略になると思われます。

久保田最後に、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体の併用についてお伺いしたいと思います。

各務抗CTLA-4抗体によってエフェクターT細胞を増やすことができるのであれば、エフェクターT細胞という準備を整えた上で抗PD-1抗体を併用するという戦略は成り立つと思います。

菅原Driver mutationがあるような場合、抗PD-1抗体単独での治療効果は期待しづらいということですが、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の併用ではEGFR遺伝子変異陽性例であっても治療成績が良かったというデータも出ています。プライミングフェーズを活性化できるような方法論が見出せれば、このような症例でも十分効果のある治療法を構築できるのだろうと思います。

各務エフェクターフェーズにおいても、PD-1以外にブレーキがあり、LAG-3やTIM-3などの存在が知られています。ブレーキが複数かかっていても、どのブレーキがかかっているのかわかれば外すことも可能であり、多様な併用療法があり得ると思います。抗腫瘍免疫に必要なT細胞の状態を正確に評価して、抑制メカニズムに応じたIO薬を使うというPrecision Medicineが、がん免疫療法の未来像になるのではないかと期待しています。

菅原また、これからそういう有効症例の選択が可能になればなるほど、副作用の発生頻度は今まで以上に高まりますので、そのマネジメントが私たちにとって重要度の高い仕事になると感じています。

久保田今回の議論を通じて、免疫チェックポイント阻害薬の働きと効果について、読者の方々にも新たな視点を提供できたのではと思います。また、これから免疫治療におけるPrecision Medicineの実現のために、臨床試験などの取り組みを通じて免疫療法の意義を明確にする責務を改めて強く感じました。本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

1) N Engl J Med. 2015 Jul 9;373(2):123-35.
2) J Clin Oncol. 2017 May;35(15_suppl): 8512.
3) Proc Natl Acad Sci USA. 2017 May 9;114(19):4993-4998.
4) J Clin Oncol. 2017 May;35(15_suppl): 11525.
5) J Clin Oncol. 2017 May;35(15_suppl): 9084.